ピントの外れているところがミソです。
○今年(平成27年分)の4冊 27.12.31
◆日本精神史 長谷川宏 講談社
著者は、在野の哲学者。長くヘーゲルを中心とした哲学の研究に閉じこもっていたが、日本の精神文化の流れを分析し、その解釈を発表した。人類は、アフリカからグレート・ジャニーを続け、この日本列島にたどり着いた。おそらくマンモスを追って。旧石器、新石器、縄文、弥生と時代区分を経て、今日の日本人が形成された。そして、今の日本がある。日本人の精神文化は、いかに変容を遂げようとも、過去の積み重ねの上にある。この日本の精神文化の流れを。縄文の昔から江戸時代までの、遺跡、遺物、文献、絵画を通して解釈したのが本書。目線は、権力者はなく庶民の精神文化。日本人の精神文化は、権力者が創造したのではない。時の権力が崩壊しても、なお滅びない精神文化。この視線が、大事なのである。上下併せて1036頁の大著。文章は平易。こつこつと読んで2週間。
◆明治大正史 中村隆英 東京大学出版会
知ってるようで知らない明治と大正の歴史。歴史とは、権力闘争の結果だけではない。そこに暮らす庶民(国民)の生活を眺めてこそ歴史である。2年前に死去された著者は元東大教授。で、本書が固いかというと柔らかい。平易に、話し言葉で、政治、経済の状況を踏まえ、庶民文化までがつづられる。重ねて、権力闘争だけが政治ではなく、政治だけで歴史が作られるのではない。上下併せて832頁。大部だが読み易い。
◆第二次世界大戦1949-45 アントニー・ビーヴァー (著), 平賀 秀明 (翻訳) 白水社
上中下併せて1576頁。大著である。よくぞ出版した。人物、地名はカタカナ。馴染みがない。それだけでも読むのに苦労する。が、読みだしたら止まらない。まるでドキュメント映像を観ているように読み進む。主だった人物と地名さえ覚えれば、馴染みのなさも気にならない。大著でありノンフィクション。コツコツというより、休みを利用した集中読み。読んで置き、読んでは置きの読み方で3ヶ月。
◆冒険歌手 珍・世界最低の旅 峠恵子 山と渓谷社
三浦半島の油壷を出港してニューギニアでの冒険旅。3人の旅。著者は女性、現役の歌手。育ちのいい著者にとって、最大のコンプレックスは「自分は苦労を知らない」ということ。このままでは将来たいへんなことになるのでは…という不安にさいなまされた結果、自ら苦難に飛び込むことを決意した。それが、ニューギニアへの冒険旅。推薦の理由は、読んでもらえば分かる。3人で太平洋を小さな船で渡れば、こういうことになるだろうという現象を、赤裸々というか、アケスケというか、おそらく一点を除いて綴っている。読めば分かる、読まなければ分からない、そして損をする。そんな一冊。