上野の町は世界でも類がない、と都市社会学の見解。上野台地には、恩賜公園以来の文化施設。台地下の猥雑な地帯、アメ横に代表される商店街、商機を求めて集まる外国人の地域。これはこれで世界の主だった都市にはそれぞれがある。が、これらのコンテンツが700mの範囲内に集まった町はない、という。なぜこの町が形成されたのかの歴史はさておく。この町の独特の空気は、東北を抜きに語れない。東北から就職のために高度成長期に上京した私と同世代は、年末の帰郷の際にはこの町でラーメンを食べ土産を買う。それが上野のDNAである。勝利も敗北も、成功も挫折も、この町ではゼロベースに戻る。だから、外国人もこの町で生きていこうと頑張る。この空気がたまらない。酔って夜遅くフラフラ歩くと、少々怖さを感じるような歳になった私であるが、意外と早い上野の夜を酔って歩くと、思わず深呼吸をしたくなる。美術・音楽を求めて上野の森を訪れた人々は、森を降りることなく銀座へと向かい食事をするのだが、ここはひとつ台地下の町を味わっていただきたい。もっとも勝者、成功者には必要のない町かもしれないが。