司馬遼太郎は、1905年(明治38年)から1945年(昭和20年)までの40年間を異胎の時代と書いた。日露戦争の勝利から太平洋戦争敗戦までの40年である。この間の日本は、それまでの日本とも、その後の日本とも異なった国であるというのである。その論の詳細については彼の書を読んでいただくとして、この間の歴史を近代史の一部とすれば、膜末維新から明治の中期までのその歴史はわかりやすい。国家が何をしたかったのか、何をしなければならなかったのか。結果からみて、いろいろとイチャモンをつけることができても、おそらく選択肢はそれしかなかったんだろう、と折り合いをつけることができる。が、この異胎の40年間、日本は何を求めたのだろうか、誰がそれを求めたのだろうか。この近代史を明晰に切り開いた論を読みたい。私には、この40年間は無政府状態であったとしか思えない。