伊藤初代と川端康成が婚約をしたのは、康成がまだ一高生だった1921年(大正10年)の10月。初代15歳、康成22歳。一週間後、康成は初代から突然の婚約破棄を告げられた。この出来事が、川端文学に与えた影響は大きいといわれる。康成の美意識に決定的に影響を与えたという女性の年齢が15歳。カフェの女給。永井荷風の『つゆのあとさき』、佐多稲子の『私の東京地図』を読んでも、当時15歳という年齢は、大人として生きていかねばならなった時代のようだ。少なくとも、この点では、日本の社会の質は向上した。15歳で得られる人生の選択肢は、限られている。いまは、その選択を先に設定することのできる時代となった。それはそれとして、康成といい、ゲーテといい、文学者の美意識は鋭敏ですなぁ~。