秋深し 隣は何を する人ぞ 芭蕉、最晩年の句。秋深し 隣は何を した人ぞ マルクス経済学者宇野弘蔵が、仙台刑務所で読んだ句。今から80年前のことであります。その当時。東北大学で同僚であったフランス文学者桑原武夫は、俳句を鑑賞するたびに宇野弘蔵のこの句が邪魔になり、深く味わくことができない。で、第二芸術論という論争を挑んだ。大雑把にいえば、俳句は芸術たりうるのだろうか、という論争であります。秋の夜、ほろ酔いでこの句を味わっていますと、『する人』でも『した人』でも、わたしには心にしみるのであります。